とある喫茶店「F」

18歳の頃から通っている、
とある喫茶店の話です。

そこは学校の近くにあったので
お昼ごはんを食べに行ったのが最初。
重箱に入った日替り弁当が600円。
アットホームで、
いつもバカ話ばっかりしてました。

今も年に1回ぐらいは行っていて、
変わらない雰囲気に和んでいます。

今日、フジコヘミングのピアノを聴きながら
「直感には従ったほうがいいかも」と
なんとなく思っていて
ふとこの喫茶店のことが
うすらうすらと気になりまして。
そういえばご無沙汰だし
行ってみたんです。

相変わらず入口におばちゃんが座っていて。
でもなぜか
「いやーよかった会えてー」と言うんです。
なんでも、暫く入院されていて
今日は用事のついでに寄ったのだとか。
だから、たまたま会えたわけです。
直感ってこれか、ラッキーと思いました。

カウンターを見ると
いつものマスターはおらず
見知らぬマダムが二人、
忙しそうにされています。

久しぶりの日替わり弁当は
重箱が少し大きくなっていて
おかずも手が込んでおり、
品数多くて豪華でした。

食後のお茶をいただいたとき、
メニューと器が
すべて新しくなっていることに
気が付きました。

マスターは引退されて
時々コーヒーを飲みに
寄っているそうですが
もう、あの味には会えない。

味の濃い焼き飯。
めっちゃ辛いカレー。
昔ながらのミックスジュース。
やたら大きい卵焼き。
モーニングについてくる
笑っちゃうほど小さいおにぎり。
そして、味噌汁。

おばちゃんから病名をきく。
すぐ帰るつもりが
なかなか席を立てませんでした。

でもいよいよ帰ろうと思ったとき
おばちゃんに、いつものバカ話調で
「まだ生きちゅううちに会えるわねえ?」
と明るく言われ、
「そりゃそうよ、またくるき」
と返しましたが
いつ来たら会えるんだろう。

そして何より
バカ話にかまけて
「26年間おいしいお弁当をありがとう」
と言えてない。

駐車場に出ると、
ここでご飯をもらってる野良猫が
私をじっと、じっと見上げた。
なんだか強い瞳だった。
思わず「うん」と頷いた。

マスターとおばちゃん宛に
お手紙でも書いて、
明日持っていこうと思う。

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