あれは忘れもしない、小学5年生の頃。
学校の売店で見た、衝撃的な文房具。
今までは必ずと言っていいほどついていた
「キャラクター」が、どこにも描かれていない。
シンプルな外観がどこか大人びていて、
何よりも目を引いたのはその淡く美しい色彩。
のちに母が「パステルカラーよ」と教えてくれた。
それまで身の周りは何でも「原色」が圧倒的に多かった。
ランドセル、プールバッグ、名札、習字セット、そろばんケース、塾の鞄・・
全部赤もしくは赤のチェック柄。
嫌いでも好きでもなく、興味もなかった。
だが、今目の前にあるその色は、
自由気ままに揺れ動く、光り輝く水面のような、
どこまでも広がっていきそうな涼しさに満ち溢れていて、
ピアノの音が聴こえてきそうだった。
夢のある未来がきらきらしながら近づいてくるような気がした。
できるならとびこんでどっぷりつかっていたい衝動にかられた。
文具ごときで大げさと思われるかもしれないが、
当時の私は大まじめにそんなことを考えていた。
勉強そっちのけで・・(笑)
「そんなに買ってどうするの」と売店のおばちゃんは言うが、
この思いは言葉にならず、「好きなんよ~」としか言えなかった。
でもおばちゃんは、どこか少し、わかってくれていたように思う。
頑張って買った缶ペンケース。
中身はこんな感じ。
鉛筆、サインペン。
今もたまに取り出しては、目を細めてます。